ホテル王と偽りマリアージュ
一哉が忙しいのはもちろんだけど、それを理由に今まで過ごしてきていた。
話さなきゃいけないことがあるんだから、話す時間は自分で作る物。
『時間がなくて無理』なんて、出来ない自分に言い訳してるだけじゃない。


「あの調子じゃ、クリスマスも年末もニューヨークで過ごすことになりそうだし……。あ。もしそうなったら、椿さんも一緒に行ってきたらどうだい?」

「え?」

「日本でなかなか時間が取れないなら、尚更だ。ニューヨークで過ごすことになっても、せっかくのホリデイなんだ。さすがに働き詰めにはならないだろう。それにハネムーン、まだだろう?」


ニッコリ笑いながら勧めてくれるお義父さんに、お義母さんも『あらいいわね!』と手を叩いた。


「椿さんは行ったことある? ニューヨーク。さすがに寒さが厳しいけど、冬は一番ニューヨークのよさが感じられると思うわ。どこか空気が凛として気が引き締まる。それに大晦日のカウントダウンもあるし、賑やかで楽しいわよ!」


沈みかけてる私の気持ちを盛り上げようとしてくれてるのか、お義母さんは、まるで子供みたいに楽しげなはしゃぎ声を上げた。
私はぎこちなく微笑みながら相槌を打ち、心の中で今ニューヨークの街にいる一哉を想った。
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