ホテル王と偽りマリアージュ
感覚の違いに、ガックリと肩を落とす。
一哉の方は、要さんの名前で機嫌を損ねてしまったようだ。


無言のまま額を突き合わせる。
否定はしたけど、私の頭には要さんの言葉が過っていた。


一哉のご乱心の夜……要さんは『欲求不満』なんてこと言ってたっけ。
それってつまり、契約外になるし、私にそういう欲求をぶつけられなかったせいだよね。
今は契約外恋愛宣言した後だし、二度とあんなことさせない為には……。


私が悶々と考え込む間に、一哉がふうっと唇をすぼめて息を吐いた。


「ごめん。悪かった。大事にしろって言ったの、俺だもんな」


いきなり謝りながらそう言われて、私の鼓動がドクンと跳ね上がる。


「なんだっけ? 色気が足らずに歴代の彼氏に手を出してもらえなかった、とか……」

「そ、そんなことまで言ったっけ!?」


カアッと頬が熱くなる。
しかも、『歴代』なんて言われるほど多くはない。
付き合った数だけは多いように誤解されると、それなのに初めてってことがそれなりに屈辱に感じるから微妙だ。


最後は黙り込む私に、一哉は小さくクスッと笑った。


「冗談だよ。俺の方も、曖昧に待たせてるわけだし。……その調子で、まだ無防備にならないで」
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