ホテル王と偽りマリアージュ
世間で騒がれているように自分が現代のシンデレラだなんて思わないけど、いずれ灰被りに戻ることが約束されてると思うと夢がない。
さすがにちょっと自分が可哀想だと思った。


「仕方ない。だって一億近い賠償金なんて背負ったら生きていけない。戸籍を穢すくらいで済むならその方が……」


溜め息混じりに呟きながら、私は手近のお祝い品のラッピングを解き始めた。


本来の私じゃ、到底普段使い出来ない高級な食器が全シリーズ揃ってる。
こんなに立派な食器を使うような料理のレパートリーもないのに、どうしろと。


なんとなく打ちひしがれた気分になり、私はぺたんと床に座り込んだ。


次の包みはいくらするかわからない高級羽毛布団。
値段の想像も出来ないトルコ絨毯にヴェネチアングラス。
ラッピングの包みやリボンを散乱させる私の後ろで、ミシッと床を踏む音が聞こえた。


ハッとして振り仰ぐと、きっちりスーツ姿の一哉さんが立っていた。
ちょっと呆れた顔で私を見下ろしている。


「お、お帰りなさい、一哉さん」


慌てて立ち上がろうとすると、彼は小さく頷いて、私の横にしゃがみ込んだ。


「なに。なんか絶対使わなそうなもんばかりだね。開けるだけ無駄だから、全部どこかにしまっとこうか。コンテナボックスでも借りるかな」
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