ホテル王と偽りマリアージュ
十五分の休憩を挟んで会議が再開された。
会議室にはそれまでいなかった要さんの姿があり、映像が切り替わった途端、彼の姿が大きくスクリーンに映し出された。
『お時間いただきまして、誠にありがとうございます。これより、私、皆藤要より、皆藤グループ本体におけるヨーロッパの事業展開について、今期の中間報告を行わせていただきます』
要さんは、いつもの軽い口調ではない。
私が今まで見たことのない『実業家』の顔をしている。
その真剣な表情と凜としたよく通る声に、嫌でも緊張が募る。
前半の各社長による業務報告の時は、デスクのチェアーに沈むように座っていたお義父さんが、スクリーンを正面から見渡せるソファに移動してくる。
私とお義母さんが並んで座っているけれど、ゆったりしたソファはもう一人くらい座れるスペースがある。
でも、真ん中になったお義母さんが少しだけ私の方にお尻の位置をずらしたから、私は気を利かせて立ち上がろうとした。
それを、お義母さんの手が止める。
「ダメよ、椿さん。あなたもここに座って聞いてなさい」
私の腕を掴みながらも、顔はずっとスクリーンに向けられたまま。
いつも明るく華やかなお義母さんの険しい表情を見ても、社長の座を巡る二人の『闘い』に緊張しているのがよくわかる。
その迫力に飲まれ、私も黙ってシートに腰を戻した。
会議室にはそれまでいなかった要さんの姿があり、映像が切り替わった途端、彼の姿が大きくスクリーンに映し出された。
『お時間いただきまして、誠にありがとうございます。これより、私、皆藤要より、皆藤グループ本体におけるヨーロッパの事業展開について、今期の中間報告を行わせていただきます』
要さんは、いつもの軽い口調ではない。
私が今まで見たことのない『実業家』の顔をしている。
その真剣な表情と凜としたよく通る声に、嫌でも緊張が募る。
前半の各社長による業務報告の時は、デスクのチェアーに沈むように座っていたお義父さんが、スクリーンを正面から見渡せるソファに移動してくる。
私とお義母さんが並んで座っているけれど、ゆったりしたソファはもう一人くらい座れるスペースがある。
でも、真ん中になったお義母さんが少しだけ私の方にお尻の位置をずらしたから、私は気を利かせて立ち上がろうとした。
それを、お義母さんの手が止める。
「ダメよ、椿さん。あなたもここに座って聞いてなさい」
私の腕を掴みながらも、顔はずっとスクリーンに向けられたまま。
いつも明るく華やかなお義母さんの険しい表情を見ても、社長の座を巡る二人の『闘い』に緊張しているのがよくわかる。
その迫力に飲まれ、私も黙ってシートに腰を戻した。