ホテル王と偽りマリアージュ
一哉も要さんも、企業買収という形で既存のホテルを皆藤グループの物にして、新規建設コストを抑えるというやり方は一致している。
違うのは、要さんが仕掛けたのが一つひとつのホテルであって、今発表した以上の利益を現段階で追及出来ないこと。
それに対して一哉は、全米にチェーン展開する経営母体を手に入れた。


『チェーン展開と言えど、個々のホテルの経営は私どもと同様、それぞれの経営者に任されています。今回、そのリーディングカンパニーと言えるニューヨークと本体の経営統合に合意を得ました。よって、現在建設中のホテルをオープンさせた後、順を追って一つずつ皆藤グループによる直営化を進めます』


つまり、個々のホテルに一つずつ仕掛けるのではなく、急所を攻めて懐中に収めたということ。
それぞれの経営者と合意に至っていない他都市にあるホテルを傘下に納める件に関しては、現段階で実績として数字を計上出来ない。
そこを、本体との合意に漕ぎ付けたことで、一年後どころか十年後まで業績予測を上方修正してきた。


『オープン後、まずはニューヨークにもう一軒。次年度にはシカゴ、ボストン。いや、西海岸に進出してもいいでしょうか。いずれにせよ、半年後には私自身が渡米し、アメリカを拠点として動きます。同じ国内。あの広大な大陸のどこからでも攻めますよ』
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