ホテル王と偽りマリアージュ
「返事は『YES』って捉えていいのかな」


私の耳を吐息でくすぐりながら、一哉が言葉で確かめる。
私は涙に詰まりながら、大きく何度も頷いて見せた。


「よかった。未だかつてないくらい、緊張した……」


大きく深い息を吐きながら、一哉がそう言った。


年明けすぐのあの幹事会の場で、全然緊張した様子を見せなかったくせに。
彼は真剣な想いを向ける時、いつも『緊張する』という言葉を私に告げる。
一哉にとって仕事が一番大事だったはずなのに、同じように私を大事に思ってくれているのがストレートに伝わってくる。


これから始まるセレモニーは、一哉にとって今までの努力と成功の証の場。
そこで私に二度目のウェディングドレスを着せてくれる。
私に本当の誓いをくれる。
これ以上の幸せが、いったいどこにあるんだろう。


「一哉……」


彼の頬に両手を添えて、踵を上げて爪先立ちをする。
そうして唇を寄せると、一哉の方からも近付けてきた。


どちらからともなく、温もりを伝えるだけの優しいキスを交わす。
軽く触れ合わせただけのキスは、私にとっても一哉にとっても、きっと本当の誓いのキスになったはずだ。
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