ホテル王と偽りマリアージュ
「そうよ。こんな派手な演出するくらいなら、開き直ってそのぐらいのことして見せればよかったのに」


更に太々しい声が背中から掛けられて、私と一哉は再び振り返った。
一哉が『あれ』と目を丸くする。


「なんだ。麻里香も来てくれてたの」


一哉が驚くのも無理はない。
少なくとも、麻里香さんは招待客に含まれていなかったはずだ。
胸の谷間を強調したラベンダー色のドレスで大人っぽく見えるけれど、やっぱり彼女は変わらない。


「絶対連れてけ!ってうるさいから、俺のパートナー代わりに連れてきた。俺たち兄妹、お前らに揃って失恋だからね。次の恋に踏み出す為にも、一度すごい惨めな気分になっておこうと思ってさ」


言葉の意味合いだけなら涙物だけど、要さんはニヤニヤしてるし、麻里香さんに至っては惨めどころかものすごい目で私を睨み付けている。


「なに言ってるのよ、お兄様! 言っときますけど、私は全然惨めじゃないんですからね! って言うか、一哉なんかこっちからお断りよ。考えてみたらあり得ないじゃないの。一回りも年上のオジサンと私が結婚なんて!」


胸の前で腕組みをして、ツンとそっぽを向く麻里香さんに、私は本気で呆気にとられた。
一哉は口元を手で隠しながら、クスクス笑ってる。
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