ホテル王と偽りマリアージュ
胸に手を当て呼吸を整えようとする私を、一哉が正面から強くぎゅうっと抱き締める。


「え? い、一哉……?」


バルコニーには私たちの他に誰の姿もないけれど、いつ誰が出てくるかわからない。
慌てて一哉の胸に手を置き、背を仰け反らせながら離れようとすると、彼の腕に力が籠った。


「ダメだよ、ああいう不意打ち……。さっき俺、ちゃんと言ったよね。『それだけじゃ物足りなくなる』って」


どこか甘い低い声で、一哉が私の耳元でそんなことを囁く。
その言葉と声に私の鼓動がドキッと跳ね上がる。


「え、ちょ、一哉? んっ……」


慌てて聞き返そうとした途端、あっさりとキスを奪われた。
しかもどんどん甘く深くなっていって、頭の芯が焼き付くかと思うくらいジリジリする。


「い、いち……」


唇が離れたタイミングで、酸素を求めて大きく息を吸った。
一哉は熱っぽい光を湛えた瞳で、私をまっすぐ射抜いている。


「セレモニー終わったら、このまままっすぐ帰ろう」

「え? ど、ドレスのまま?」


乱れた息のせいでドキドキしながら聞き返すと、彼は小さく一度頷く。


「このドレス、俺が脱がしてそのまま抱きたい。本当は今すぐにでも」

「えっ……ええっ!?」
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