ホテル王と偽りマリアージュ
それでも。


「多分。……大事にしてくれてる」


ぼんやりと考えながらそう答えた。
私の返事が意外だったのか、芙美は「へえ?」と語尾を上げてその先を促してくる。
私はなんとなく箸の先を咥えながら、秘書を従えて奥まったテーブルに進んでいく一哉の姿を目で追った。


あの夜から一週間が過ぎたけど、『初めて』の私に乱暴に触れたことをかなり気にしてるのがわかる。
確かに私、あの後、二、三日は一哉を相当警戒していた。


向かい合って食事をしながら、『取って』と言われた醤油を渡す時指先が触れただけで、ビクッと身体を震わせていた。
一度はそのままテーブルに落とし、食卓が大惨事になったくらいに。


でも、考えてみれば一哉は『もうしない』って言ってくれたんだ。
まだ短い付き合いだけど、芙美にも言った通り、一哉は決して悪い人じゃない。
あの時あの状況でのその言葉は信じても大丈夫、と気持ちを切り替えて、今はなんとか普通に接してるはずだと思う。
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