ホテル王と偽りマリアージュ
彼が頬杖をついたまま、ゆっくりと顔を上げ、私の方に目を向けた。
途端に、私の胸はドッキ~ンと大きく跳ねて、そのまま高鳴り始めた。


な、なに、この現代版の王子様みたいな人っ!!


それが私のその時の感想。
予想外の超美形の登場に、完全に気が動転して舞い上がってしまっていた。


彼の方は特に興味もなさそうに私を見て、ああ、と軽く頷いた。
『そっち。どうぞ』と、向かい側の空いた椅子を勧めてくれただけ。


言われるがままに彼の向かい側の椅子に浅く腰掛け、緊張のあまり仰け反るほど背筋を伸ばした。
彼の方から何言か話し掛けてくれたけれど、私は心臓バクバクで、なにを聞かれてなにをどう返したかも今となっては覚えていない。


『じゃ、そろそろ出ようか』


向かい合って会話していた時間は、多分せいぜい十分程度。
彼が先に立ち上がると、私の手を取って促した。


お見合いはもう終わり?
そしてこの後はどうすればいいの?と戸惑う私に、彼は軽く肩を竦め、窓の外を顎でしゃくって見せた。


『いつまでも冷えたコーヒー飲んで座って話すより、少し庭園でも散歩しながらの方が、いくらか楽しいんじゃないかな』
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