だから今夜も眠れない
 伯父さんはもう葬祭場に安置されてると言うので、

家で待ち構えていた母は、

あんな大量にお土産持ってたのに、お礼の一つもなく、

すぐに取り上げ、有無を言わさず黒のワンピースに着替えさせられた。


母のお古らしくて一寸小さめで、

「胸がきついんですけど」

と言ったら睨まれた。


斎場に行くタクシーの中、

母は堰を切ったように話し始めた。


普段行き来していない親戚たちに遺産はどうするんだとか、

不動産は打って均等に分配しようとか。


勝手なことを言いだしているとか。


祖父も祖母ももうなくなっているし伯父さんは独り者だし、

兄弟は父一人だから、

分配も何もない筈なのに、

なんせ、売れっ子の絵描きだったためどのくらい資産があるのか判らないのだ。


でも、さすが独り者ちゃんと顧問弁護士に管理させていたため、

その人がきっちり采配をふるってくれ不動産は売却せず父の名義に、

絵画については売却せず一枚ずつほしいものを親戚縁者に配布の上、

残りはオークションを経て寄付をするようにということになったのだそう。


只一つを除いては……


「は?アトリエ?」

「そう、伯父さんが経営してた画廊が入ってたビルなんだけど、

その屋上にペントハウス、知ってるわよね?

その部屋なんとあんた名義になってたの」

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