だから今夜も眠れない

「私の?なんで?」


「さあ?あんた達さんと仲良かったからおねだりでもしたのかと思ってたんだけど」


「そんなことしてないよ」


確かにあのビルの屋上にあるアトリエには何度か行ったことがある。


あるどころじゃない高校の頃は休みになると泊まり込んでいた。


部屋中落書きだらけの日当たりのいい部屋で

すごく落ち着くし、好き放題やれて最高だったんだよね。


窓が広いからエアコンもろくに効かなくて夏は遮光カーテン閉めきって穴蔵みたいだったけど、

伯父さんはいつもその真ん中でごろりと横になりながら絵を描いてたなあ。


私もごろんとしながら、

伯父さんのお気に入りのパリッともなかアイスかじりながら漫画片手にその様子見るの好きだった。


専門で上京して頼ったのも叔父さんだったし、

就職も最終的に無理に今のところに突っ込んでくれたのも叔父さんで、

いつだって私のことを気にかけてくれたのは叔父さんだった。


なのに軌道に乗って自分のペースができたら忙しぶって寄り付かなくなったんだ。


最後に伯父さんにあったのは、


あれ?そうだ、行かなくなった原因は女の人がいたからだ。

元々モテ男だったから、部屋には女の人良く入れてたけど、アトリエだけは私だけだったのに、

卒業旅行のお土産持っていったら、女の人が赤ちゃん抱いて大きなスーツケース持って伯父さんを待ってて……

私なんか居たたまれなくて、

逃げて、

そんで、あ……着拒にしたんだ。


私が今の仕事について2年だから、もう2年も会ってないんだ。

あの女の人とはどうなったんだろ?

今日のお葬式には来てなかったみたいだけど。
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