だから今夜も眠れない
チャリ……

手の中にはあのアトリエの鍵。


火葬場で伯父さんを見送って、

お清めの宴会はパスして私は東京に戻ってきた。


母はいて欲しかったみたいだけど正直滅多に会わない親戚たちと話す元気は無い。

作り笑いしてお酌しても憂鬱なだけだ。


私はその足でアトリエに向かった。


古いビルだけど何となく趣のある長細いビル。


そこに伯父さんの画廊があった。


メンテナンス会社に管理されているから、

要らなくなった屋上の管理室を安く買い取って、

リフォームしてそこに伯父さんはアトリエと称して隠れ家を作った。


売り物にならない絵や気に入って売りたくない絵をここにこっそり隠していた。


あの子達はどうなったんだろう。


伯父さんの兄弟はお父さんだけだし、

勝手に伯父さんのアトリエに入る人はいない。


きっとまだあそこにあるはず。


私は走り出した。


思い出したよ伯父さん!あの時言ってたんだ。



『俺が死んでもコイツらは人には見せないように、渡さないように、お前に見張っててほしい。

その代わりここはお前のものだ好きに使っていいぞ。但し、俺が死んだらだ』



あれ本気だった。なら、私も約束を果たさないと。

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