だから今夜も眠れない
昔はこういう一つ一つが楽しくてたまらなかったんだけどね。

無事屋上に着き、ブザーがなる。


もう、ここはチンと鳴るものでしょう?

イチイチ突っ込みいれたくなる。



屋上につき重いドアを押し開けると、

多面体の建物がひょこんとたっている。


懐かしい。

ここがあの、アトリエなのだ。


叔父さんが私にたくしたもの。


それがこの中にあるはず。


鍵の束からピンク色に塗られた鍵を選び鍵穴に差し込んだ。


時々ここに来ていた私のために、

このピンクの合鍵を作ってくれて暫くは私のものだった。


だけどあの日、あの人に会ったとき、私はその鍵をその人に渡して二度と来なかった。


私と伯父さんの場所に他人が、しかも女の人が居たことに、

裏切られた気分だった。


仕事で単身赴任だった父、実家の病院で事務をしていつも忙しそうな母。


伯父さんはそんな私が不憫で可愛がってくれた。

でも、私はそんな優しさに甘え恋人気分でいた。

だから、ここに二度と来なかった。


もう自分のいる場所はないと。
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