だから今夜も眠れない
指定されたメールアドレスにメールを送ってからずっと、

返信を持ってしまうのは、やっぱり下心なのかな。


家に帰ってからもずっと携帯が手放せない。

「はあ、来るわけないかあ」


ポスンとベッドに横になると、

ふワンと香る私じゃない匂い。


洸の匂いだ。


「あ……」


すっかり忘れてた。

私この3日眠れないくらい落ち込んでたんだった。


洸……


大好きだった。

匂い、仕草、手をぎゅうって握った時にできる筋とか、

もう本当に宝物かって思うくらい大好きで、

だから、浮気だって今まで目を瞑ってきたし、

お金だって貸してあげた。


なのに……


『俺もう、お前とはやってけない。

 なんて言うの?つまんない女だよね。

 顔だって普通だし。

 俺、 面食いなんだよ今更だけど。

 化粧もろくにしない女とよく今まで続いたよね。

 もっと、女磨いた方がいいぜ?

 そもそも、なんだよその髪ぱっさぱさじゃん。

 だせーんだよ。

 じあゃな』

待って、とすがる私に、

「もう限界」

一言投げて出ていった。


ひどすぎる、すっぴんでも可愛いって言ったじゃん。

女は素直が一番手言ったじゃん。

髪型何て変わったって一度も何も言った事なかったじゃん。


あーっダメださっきまですっかり忘れてたのに、

こんな残り香一つでまた引き戻されちゃうんだ私。



今夜も眠れないんだろうか?







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