女の子として見てください!
翔さんは言った。

「お前、いい加減にしろよ」

いつもより、低い声だ。
緊張が、増す。


「俺とユキのことは、お前には関係ない。
首突っ込んでくるな」

どうしよう。
こんな目で睨まれたの、初めて。
足がすくんで、動かないよ。


「で、でも私……」

震える声で、なんとか言葉を絞りだそうとするけど。
翔さんは、言葉の続きを遮って。


「俺にだって話したくないことがあるんだよ!
お前みたいに毎日お気楽に生きてるわけじゃない!
おもしろ半分で俺の過去に触れるな!

もう、俺にかかわるな!」


狭い資料室に、翔さんの怒鳴り声が響いた。


かかわるな。

ハッキリとしすぎた、拒絶の言葉。

胸がざわつく。

足の震えが強くなる。


私は、


「……ごめんなさい………」

と口にするので精いっぱいだった。


私の謝罪を聞くと、翔さんはなにも言わなかったけれど、身体を離して私に背を向け、扉の方へ向かう。

明らかに、許してくれた、って感じじゃなくて。
むしろ、『お前と話すことはもうない』って言われているような感じがした。


話すことはもうない。

もう、口をきいてくれないのかな。


そうなったとしても、私が悪いんだから仕方ない。私が、翔さんの気持ちを考えなかったから。



だけど。


だけどね。



『おもしろ半分で俺の過去に触れるな』


……違う。

おもしろ半分ってわけじゃ、ない。



「す……っ」

私は震える声を、翔さんの背中に投げかける。


「好きな人のことっ、知りたかったんです……っ。すみませんでした……っ!」

私は頭を下げて、駆けだして。翔さんの横を通りすぎて、翔さんよりも先に廊下へ出た。
< 106 / 155 >

この作品をシェア

pagetop