女の子として見てください!
「見当たらないから探した。仕事終わったんなら帰れよ?」

「は、はい。ちょっと資料を探していて」

「ふーん。って、なんでこんなにファイルが散乱してるんだよ。仕方ないな」

そう言って、彼も私の隣にしゃがみこんでくれた。


……くれたけど。



「これ……」

私が今さっきまで見ていたユキさんの書類を目にした翔さんは、すぐにそのファイルをバタン!と閉じた。

そして、なにもなかったかのように、他のファイルをかき集め、立ち上がって本棚に戻した。


「ホラ、お前も早く手に持ってるファイル、棚に戻せ」

翔さんにそう言われるけど、私はファイルを抱えたまま、立ち上がることができない。ただ翔さんを見上げることしかできない。


「松城?」

気づいたら、立ち上がる代わりに疑問を口にしてしまった。

聞いちゃいけないことだって、雰囲気で感じ取っていたのに。


「今隠した事件、どういったものなんですか?」


翔さんはピク、と眉を動かしたけど、なにも答えない。

ごまかしているのは明白だ。
なんのこと?としらばっくれる様子もない。
声も出なくなるくらい動揺しているように見える。


私は、その領域にさらに足を踏み入れてしまう。

「書類の作成者がユキさんってことは、間違いなくユキさんがかかわった事件ってことですよね?
その事件が起きたのが五年前。
そして……ユキさんが警察官を辞めたのと、ユキさんと翔さんが別れたのも五年前なんですよね?
その事件となにか関係があるんですよね?
ということは、翔さんが職場恋愛をしないって決めたのも、今隠した事件と関係が……」

そこまで言った時、言葉の途中で、翔さんの右腕が勢いよく私の顔の横に伸びてきた。
翔さんの右手は、私の後ろの本棚に強くぶつかる。
私は、本棚と翔さんの間に挟まれた。

翔さんの顔、すごく近い。

近いけど、すごく怖い顔をしていて。
いつもとは違う意味で心臓がドキドキしていた。
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