女の子として見てください!
「大丈夫ですか? 美桜さん」

給湯室の掃除をしていたら、いつの間にか後ろに立っていた飯尾君にそんなことを尋ねられる。

私は流し台の掃除を続けながら答える。


「え? 大丈夫ってなにが?」

「最近元気ないじゃないですよね?」

「え、そ、そうかな」

元気なわけがない。
好きな人と二週間もまともに口をきいていないのだから。

でも、周りの人に気づかれないように、気をつかわせたりしないように、元気がないことは顔には出さないでいたはずなのに。


「元気ないの顔に出てた?」

顔だけ振り向いて飯尾君にそう尋ねると。


「顔に直接出てたわけじゃないですけど……明らかにいつもと様子違うんですもん」

「様子?」

「たとえば、当番でもないのに給湯室の掃除を自らやる、なんて女性らしいこと今までしたことないじゃないですか」

う。なんてこった。そんなこと言われるなんて悲しい。
でも確かにそうかも。
気を紛らすために。そして元気がないことをごまかす演技をしようとするがあまりに、自分らしくないことをしてしまったのは事実だ。


飯尾君は続ける。

「伊浅さんも、機嫌悪そうっていうか、ピリピリしてるっていうかだし。ふたりの間になにかあったのかなって思ったんですけど、違います?」

「……違くないよ」

心配させてしまっているし、変にごまかしてもまたすぐにバレてしまうだろう、そう思い、私は伊浅さんとの一件をざっと飯尾君に説明した。
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