女の子として見てください!
え? なに? 私今、ナイフを目の前に突き立てられてるんですよ? 今、そんなふうに爆笑するところですか?

しかも、私、翔さんがこんなふうに思いっ切り笑うところ、初めて見た。
好きな人の笑顔を見るのはうれしいことだけど……正直、この状況でのそんな笑顔は、いらない。


そう、いらない。



「な、なんだお前? この女のオトコじゃねーのかよ? なに笑ってやがる」

ああ、ほら。ナイフ男ですら戸惑っているじゃないか。


それなのに、なおも笑いがやまない翔さんを見て、私はもうガマンができなくなった。


私は、内股でナイフ男の身体を倒した。
この状況をずっと見ていた周囲の人たちがざわついているのが一瞬で止まった。誰も、私が突然こんなことをするとは思わなかったんだろう。

私はそのまま、ナイフ男に寝技を決め、身動きを取れなくしてやった。

そして、たったひとり、元からざわついていなかった男の人が私の元へと歩いてくる。


「お疲れ。今要請呼ぶから、もうちょいそのままでいてくれ」

そう言って彼は、くるっと私に背を向けて、署に電話をかけ始める。


『大丈夫か?』の一言もない。
ナイフを持った男を確保する、そんなこと私だったら当たり前、くらいに思われている気がする。

そりゃ確保はするよ。犯罪は許せないし、怖くなんてなかったもの。


でも。でもさあ。



でもさあ!!!
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