エリート専務の献身愛
 そんな私の様子に気づいたようで、彼は一歩下がって軽く両手を上げた。

「じゃあ、今度ならどう?」
「今、度……?」

 こんなに強引なのって、やっぱりちょっと怪しいんじゃない?
 迷っていないで、ハッキリ断ればいい。彼氏だっているわけだし。

 由人くんを頭に浮かべるけれど、最近ずっと放っておかれっぱなしなのを思いだし、ただモヤモヤしてしまった。
 由人くんが原因で表情を曇らせていた私に、彼は諦めずに交渉を続ける。

「今日は連絡先だけ交換っていうので、どうかな」
「あ、でも、その」
「それとも、プライベートナンバーを教えるのに抵抗あるなら、会社に電話する?」

 うまく受け答えできない私を置いて、どんどん話を進めて行く。

 会社に電話だなんて、本気で言っているの?
 アメリカンジョーク?

 爽やかに白い歯を見せて笑っているけれど、全然なにを考えているのかわからない。

「ああ。もちろん、取引先とかを装って電話するよ」

 もしも本当に会社に電話をくれたとしても、営業に出ているからほとんど社にはいないし。
でも、在社している時はいつ電話が来るのかって、気が気じゃなくなりそう。

 ……会社はだめだ。

「ホープロエクスだもんね。じゃあ、聞かなくてもすぐわかる――」
「わっわかりました! 携帯を教えるので、社にだけはやめてください!」

 突発的なことに弱いなんて、営業なんか向いていないんじゃないかな。

 頭の隅でそんなことを思って落胆していると、彼は反対にとてもうれしそうに目を細めて私を見ていた。

「ありがとう」

 咄嗟に承諾してしまったことだけれど、やっぱり知らない人と食事なんて無理だし、なにより由人くんがいるし。
素っ気なくて冷たくても付き合っていることには変わりないから、裏切ることはできない。

 どこかお店を紹介するくらいならできても、一緒に食事は無理って言わなきゃ。
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