エリート専務の献身愛
 瑛太くんの名前が飛び出してきて驚いた。

 そうだったんだ。瑛太くんのかかりつけはこの病院だったんだ。
 こんな偶然があるんだと、不思議な縁を感じて顔が綻ぶ。

「瑛太くん、元気でしたか?」
「ええ。いい顔していましたよ」

 久しぶりに瑛太くんと触れ合えた気がしてうれしくなる。

 ん? でも、待って。

「どうして、私が瑛太くんを知っていると?」

 そんな話はひとこともしていない。
 この間先生と話が盛り上がったといっても、患者さんの話は一切しなかったし、月島総合病院の話だって出なかった。

 すると、奥さんは受付のペン立てからボールペンを手に取った。

「私がこれ使っていたのを見て、瑛太くんが反応したんです。『おねえちゃんといっしょだ』って。お母さんに聞くと、『懐いていた女性はこのメーカーに勤めていたようだ』と。容姿など話していて、あなただって一致したんです」

 奥さんがくすりと笑って手の上に乗せたボールペン。それは、前回私が置いていった会社名入りのボールペンだった。

「院長(主人)も、時折思い出すくらいあの子のことを心配していたので。月島さんでよくしてくれたのが製薬会社の人だと話を聞いて、あなたに興味があったみたいですよ」

 口元に手を添え、可笑しそうに笑う。

「だから、直接会って満足したんじゃないかしら」
「満足……?」

 きょとんとして、ゆっくり言葉を繰り返す。
 いつまでもピンときていない私に苦笑して、優しく教えてくれた。

「きっと、あなたのこと、自分と似た思いを抱えている、同志だと認めたんだと思うから」


< 147 / 200 >

この作品をシェア

pagetop