エリート専務の献身愛
大きなあくびをして目を擦る。
スッキリしない頭はしょっちゅうだけれど、今日のは格別だ。
無意識に何度も溜め息をついていた。それに気がついたのは、鏡を前にしたときだ。
「あ……」
化粧を終えて髪を結おうと思った次の瞬間、声を漏らした。
最近いつも同じヘアゴムを使っていた。
ビジューのついたヘアゴム……昨日、浅見さんのところに忘れてきちゃった。
ホテルのデスクに置いたのは浅見さんだった。
私の髪を解いて、大事そうに指を滑らせてくれて……。
――『明後日シアトルに戻る。瑠依。一緒に来ないか?』
昨夜のことが一瞬で蘇る。
私……『はい』と即答できなかった。
まさかそこまで、もう時間がないと思っていなかったから。
鏡の中の自分と向き合う。そして、そっと指で触れた。
あんなセリフ……簡単には言えないもののはず。たったの約二週間しかいない私相手に、どうしてあんなことが言えたの? やっぱり、上に立つくらいの人は、決断力が違うってこと?
自分の顔が、ますます曇っていく。
また頭の中で声がする。
――『今じゃなくてもいい。明日、また会おう。そのときに返事を聞かせて』
今日、私はなんて返事をすればいいんだろう。