エリート専務の献身愛

 自己突っ込みを心の中でしても、わざわざ口に出すことはしない。

 いつからか、努力することを諦めてしまっている。
もしかしたら、恋愛の消化不良の分を、仕事に向けて発散しているのかもしれない。

 由人くんの足元に座ると、おもむろに彼が起き上がった。

「瑠依ってよく靴買ってるよなぁ」
「あ、うん。いつも靴底が」
「あ。そういえばさー」

 明日は休みで心がリラックスしている。

 ゆっくり会話するのも久々で、たくさん話したいことがある。
他愛ないことだけれど、取り留めのない会話をして穏やかにふたりの時間を楽しみたい。

 簡単に思えるようなそんなことが、今はものすごく難しい。
 久し振りに恋人らしい雰囲気だったのに、話の腰を折られ、モヤモヤしてしまう。

 些細なことだ。
 だけど、これって本当に当然のことなのかな? 仕方ないことなのかな。

 疑問を浮かべ、『友達が飲み過ぎてこんな失敗した』とか笑う由人くんの話を半分聞き流す。

 よくよく考えたら、いつも話の聞き役に回っているのは私だ。
 飲み会の場で聞いた馬鹿話、友達の恋愛事情、会社での出来事。

 男の人だから、仕事の愚痴とかはなかなか外で言いづらいからかもしれない。

 そう思って、私も色々聞いてほしいという気持ちを押し込めて、耳を傾けてきていた。
 でも、私だって、たまには聞いてほしくなる時がある。

 ただ毎日過ごしているわけじゃない。私なりに、頑張っているから。
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