エリート専務の献身愛
「ずいぶん気取ってるな。東京にも慣れてないくせに。なぁ?」
「えっ。あ、うん。まぁでも……」

 突然話を振られた彼女は、煮え切らない態度で言葉を濁す。

 おそらく、彼の類稀なるルックスに遠慮しているみたいだ。
 彼女の視線はずっと浅見さんにあって、それはまるで有名人でも見たような顔つきでいる。

 由人くんはさらに面白くないといった表情を見せた。

「仕事ができるとか、そんなこと社外だったらどうとでも言えるだろ」

 鼻で笑って言われたことに、思わず自分にも向けられた言葉のように感じて胸が痛んだ。
 由人くんから目を逸らし、俯いた。刹那、浅見さんが私の肩に手を置く。

 おもむろに顔を上げると、浅見さんは至極真剣な面持ちで私を見て言った。

「自分の仕事を認めてもらうべき相手は、仕事だけでなく人に対しても高い意識を持つような懐の深い人間だ。だから今、感情的になる必要はない」

 彼は僅かに首を横に振る。

 折れたはずの心が徐々に温まっていく。

 迂闊にも涙がひとしずく頬を掠めた。
ハッとして手の甲で拭い、気を引き締め直す。

 肩に置かれた手には、さらに力を込められる。

「可哀想な男だ。彼女の魅力をわかっていないなんて」

 この人は……昨日で会ったばかりなのに、どうしてこんなに欲しい言葉をくれるんだろう。

 たとえ、この場限りの嘘やでまかせだったとしても、確かに私の心は救われる。
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