エリート専務の献身愛
「浅見さんって、なにをされている方なんですか……?」

 思わず頭の中にあった疑問が口をついて出てしまった。

 気になるのは本当だけれど、なんだか今の聞き方だと、疑っているっていうか、勘繰っているようなニュアンスに取られちゃうかも。

そんなことを思ってしまったのは、これまで割とすぐに返事をくれる浅見さんが、押し黙ってしまったからだ。
聞いてはいけなかったのだと後悔し、慌てて手を振った。

「あ、言えなければべつに大丈夫で」
「専務」
「せっ……」

 専務って、あの社長や副社長の次くらいに偉い役職の!?

 驚愕して瞬きも忘れていると、軽く握った手を口元に当て、くすくすと笑われた。

「……また、わざとそういうことを言ったんですか? 私をからかおうとして」

 私はつい、じとっとした目を向けてしまう。
 浅見さんは、楽し気に笑い声を漏らし続ける。

「さあ? どうかな」

 スーツ姿で会った昨日は特に、大人っぽいと思った。けれど、今目の前で口元を緩めている彼は、とても身近に感じられた。

 小さく口を尖らせながら、ふと考える。

 でも、もしも嘘をつくなら、いっそのこと社長とか言うんじゃないの?
 そこを中途半端に『専務』を選ぶって……。

 不可解な気持ちで眉を寄せながら口を開く。

「もしかして……本当……なんですか?」


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