エリート専務の献身愛
私があと少しで食べ終わる頃には、浅見さんはすでに先に食べ終えていた。
急ごうと思った矢先、彼の携帯に着信があったようで、「ちょっとごめんね」と言い残して席を外していった。
そういえば、カフェでも電話していたな……。
仕事かな? それとも……。
今さっきまで浅見さんが座っていた席を見つめ、ぼんやりとする。
――『ひと目惚れって信じる?』
急に思い出してしまった。
あの言葉は、ハッキリと相手が私だと言ったわけでもない。
仮にそうだったとして、本気だなんて思うほうがおかしい。
「私、なんでここにいるんだろ……」
すりガラスの窓を見て、ぽつりと呟いていた。
――『こんな時だからこそ、誰かと美味しいものを食べたほうがいい』
あの時、彼に腕を掴まれて言われたことで納得しよう。
ここにいる意味は、私が少しだけ休んでいいよって神様が言ってくれていることにしておこう。
非現実的な出来事と、たぶん、ひとりだったら絶対に入ることのなかったお蕎麦屋さんの美味しい蕎麦が元気をくれる。
これを全部食べ切ったら、私は明日からまた頑張れる。
最後のひと口をつるっと啜り、ごくんと喉を鳴らした。
「お待たせ。デートの最中なのにごめんね」