エリート専務の献身愛
 そんなとき、ふと頭に過ったのは彼の言葉だった。

――『アメリカではYES I canの精神が普通だよ』

胸がドクンと脈打つ。
震える声を必死に抑え、どうにか口を開く。

「わかりました」

 ……言ってしまった。できるかどうかもわからない約束をしてしまった。
 騒ぐ心臓でどうにかなりそう。緊張しすぎて、挙動不審になっていないか不安になる。

 今聞いた店名を手帳にメモし、笹川先生を見ると、少し機嫌のよさそうな表情。
それを見て、ふっと思う。

この流れなら、少し会話ができるかも……。

「あのっ、笹川先生は、九州のご出身だとか!」

 勢いをつけて言葉を発してしまったから、語尾が強くなってしまった。
 笹川先生は私を見上げ、ぽかんとして固まる。私はハラハラして反応を待った。

「知ってたんだ。住んでいたのはもう何十年も前だけどね。そうそう、偶然にも、この病院には九州出身のドクターや看護師が多くてね」

 しかし、今まで見たことないほど和やかな雰囲気で言葉を返されて、拍子抜けした。
「そうなんですね。それならお話も盛り上がるのではないですか?」
「ああ、この間も故郷の味で盛り上がって」

 よかった。一歩踏み出しただけで、こんなに相手の対応が変わるなんて知らなかった。
 いつもと同じ約十分程度の時間が早く感じられる。今日に限っては、話に花が咲いて足りないというほどだった。

 私は軽い足取りで病院を出て、この勢いで今日のスケジュールをこなせるように頑張ろうと次へ向かった。
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