エリート専務の献身愛

 説明会が終わり、会議室からぞろぞろとドクターたちが出ていく。
 廊下で挨拶を繰り返し、最後のひとりを見送ったあとに「ふぅ」と息を吐いた。

「約束していたものじゃなかったなぁ」
「さ、笹川先生!」

 背後に残って立っていたことに気づいていなくて、心臓が飛び出そうなほど悪露ろいた。くるりと身体を向け、すぐさま深く頭を下げる。

「その件は、誠に――」
「久々に食べた。おふくろの味と比べて上品すぎたけどな」

 聞こえてきた言葉に、少しずつ顔を上げる。
 笹川先生は、目を大きくさせる私をジッと見てから不意に笑った。

「今日の説明会、面白かったよ。新しい薬……使ってみようかね」
「え……」

 思いがけない言葉に、頭がついていかない。口をぽかんと開け、見開いた瞳に柔らかい表情をした笹川先生を映す。

 今……薬を使ってくれるって言った……?

 薬を採用してくれると言われたら、当然うれしい。だけど、苦手意識があった笹川先生に笑顔で言われたおかげで、何倍もうれしい……!

 こみ上げてくる思いに、目を潤ませるだけでなかなか言葉が出てこない。

「またきんしゃい」

 笹川先生は、今まで聞いたこともない親し気な口調で私の肩にポンと手を置いた。

「はっはい! ありがとうございます!」

 私はようやく声が出たかと思えば、意外に大きな声になってしまって、慌てて口を押さえると笹川先生が苦笑していた。
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