人事部の女神さまの憂いは続く
「それならいんですけど。それで足りないので、ここ通い始めちゃいました」
おどけたように言うと
「そっか。がんばって。僕、理系数学しか担当してないんだけど一応、数学講師だから、オススメした参考書、そんなハズレじゃないと思うよ」
穏やかな笑みを浮かべているお兄さんがいた。先生だったんだ、と思っていると名札が目に入った。
“数学:川崎 龍一”
ここに来たらまた会えるんだ、無意識にそう思った自分に赤くなりながらも
「がんばります。あ、そうだ」と言いながら鞄のポケットに入れていたチロルチョコの存在を思い出して
「この前、アドバイスいただいたお礼です」
と先生に差し出した。びっくりした表情をしていたものの
「サンキュ。チョコ、好きだからラッキー」
と言って顔いっぱいの笑顔をくれた。その顔にドキっと胸が高鳴った。
それからというもの予備校に行く日は、先生に会いたいという下心満載で、毎回講師室に質問に行くようになった。そして、あの日の笑顔がもう1度見たい一心で、行く度にチロルチョコを1つ先生に渡して帰るのが恒例になっていた。