人事部の女神さまの憂いは続く

「じゃあ、まずはちょっと腹ごしらえ付き合ってよ」

そう言って暖簾も看板もないお店に入っていく。

「波木様、お待ちしておりました」

入るなり準備されたカウンター席に案内されることを考えると、やっぱり事前に予約を入れてくれていたようで、マメだなって思う。

「大将、いつもの軽いバージョンで」

「はいよ」

そんなやり取りを眺めていると

「僕、最初から冷酒なんだけどニシユリちゃんもそれでいい?」

声をかけられた。はい、と頷いて見せると、またニコッと笑われる。

この笑顔はさっきとは違って嘘くさいチャラ男そのもの。それに苦笑いが漏れてしまいそうになるけど、とりあえず、おしぼりを差し出してくれる女将さんに視線を移すことでごまかした。


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