人事部の女神さまの憂いは続く

半年前なんて藤木さんは、ただの仲良い会社の上司で、お兄ちゃんみたいだったけど、それだけで。

プロポーズしてくれてからは、いきなり入籍して一緒に暮らしはじめちゃったし、こういう恋人っぽい雰囲気ってあんまりなかったなって。

「恋人同士っぽい?」

そう言葉にすると、うんと満足気に頷いている藤木さん。その顔好きだなって眺めながら

「ねぇ、恋人同士っぽいことしたい」

って言ってみる。ん?と首をかしげながら

「例えば?」

と聞かれた。自分で言っておきながら、あんまり思い浮かばないのは、もう何年もデートらしいデートをしてなかったから。難しいな、と思いながら

「ドライブ、とか?」

ひねり出してみると

「いいよー。どこ行く?」

あっさりOKが出た。けど、どこ行くって言われても困る。

ドライブデートなんてしたことないし。

あ、そういえば柏木さんに夜景観に連れてってもらったなーなんて思い出していると、ムッとした顔の藤木さんがこっちを見ている。
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