人事部の女神さまの憂いは続く

「うわー気持ちいい」

窓を開けると、海からの風が気持ちいい。運転席の藤木さん越しに見える海をワクワクしながら見ていると

「なに?そんな俺、かっこいい?」

相変わらずな藤木さん。

「藤木さんじゃなくって、海見てたんですー」

「嘘つけ。見とれてたくせに」

そう言って小さく笑う藤木さんは、まぁ確かにカッコいい。

がしっとしてるからTシャツ一枚でもさらっと着こなしてるし、日よけのサングラスも様になってる。でも私としては、もうちょっと線が細いほうが好みだし、大好きな目が隠れてしまうので、そのサングラスもとって欲しい。

そんなことを思いながら、マジマジと見ていると

「なんだよ。なんか不満なのかよ」

ちょっとご機嫌を損ねてしまったようだ。

「なんでもないです」

言いながらもう一度風を感じたくて、藤木さんとは反対側の窓から顔を出すと

「もうちょっとでつくぞ」

言いながら髪をグシャグシャっと撫でてくる。

「どこにですか?」

聞いてもスルーされて、ほらっという声とともに駐車場に車が滑り込んだ。
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