人事部の女神さまの憂いは続く

「レストラン?ランチには早くないですか?」

まだ10時前だし、と思って聞くと手を引かれて中へ促された。

「お待ちしておりました」

黒スーツのキレイな女性が出迎えてくれて、訳も分からずに案内された席に着くと

「おめでとうございます。まずは、こちらご記入いただいてお待ちいただけますか?」

一枚の紙を示される。

そこには“新郎様”“新婦様”とあって、ようやく、ここがどこかわかった。

「結婚式場?」

「そう。お前、何も考えてなさそうだから。香織の結婚式の時、海見えるところいいなって言ってたろ」

ちょっと自慢げに言っている旦那様は、さすがだ。そんな私が言ったことも忘れてたようなこと覚えてくれていたことが嬉しくって

「ありがとうございます」

お礼をいうと、おう、とちょっと照れていらっしゃる。

その横顔がかわいいなって思っていると

「とりあえず、これ書くぞ」

ペンを握って、さっきのお姉さんが置いていった紙をドンドン埋めていっている。
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