人事部の女神さまの憂いは続く
テラスの手すりにつかまって、もう真っ暗な海を見ている侑里の後姿を眺めながら思う。話すとしたら、今しかないよなって。
心を決めて、侑里の肩をトントンと後ろからたたいた。
「なに、感傷にでも浸ってんの?」
「ちがうわよ!」
言いながら振り返った侑里は、ちょっと不貞腐れたような顔をしている。
「どうしたんだよ?まじでマリッジブルー?」
おどけたように言ってみると
「違うしー。そもそも、もう入籍して半年くらいたってるからマリッジブルーでも手遅れでしょ」
カラカラっとした声で笑っているけど、今から俺がしようとしていることを考えると、ちょっとドキっとしてしまう。
とりあえず決心が鈍らないうちに、とポケットの中から銀貨を取り出して、侑里の目の前に掲げた。
「はい、これ。頼まれたんだよね」
「SIX PENCE?頼まれたって、だれに・・・・」
不思議そうに手渡したものを見ながら呟いていたけど、自分で言いながら誰からかに気づいたようで、はっと息をのんでいる侑里。