人事部の女神さまの憂いは続く

あ、この手だ。寒い日には繋いでポケットに入れてくれていたこの手。

私が大好きだった大きな手。

ちょっとゴツっと関節が出ているこの手が好きだった。

きっと私が手フェチっぽくなったのは、りゅう先生のせいだと思い返していると

「今は、そのまま東京?」

りゅう先生の声に引き戻された。

「はい。向こうで就職して。先生は?」

「俺もあの後、結局、首都圏の校舎に異動になって、それ以来ずっと向こうなんだ。今日は久々にこっちに特別講義で呼んでもらって」

そういう先生はちょっと大きめの鞄をもっているだけ。

「そっかぁ。相変わらず人気なんですね」

りゅう先生が“人気講師”って呼ばれていたあの頃を思い出す。

「今日1泊してすぐトンボ帰りなんだけど・・・」

りゅう先生のそんな声にかぶせて

「ニシユリ?」

よく知っている声が後ろから飛んできた。
< 4 / 399 >

この作品をシェア

pagetop