人事部の女神さまの憂いは続く

よかった。

暴君の怒りモードはよくわかんないから。ほっとしながら、焼酎グラスを手渡すと

「サンキュ」

大きな手と重なって、キュンとする。やっぱり好きだな、と思って眺めていると

「初めて侑里の家で会った時も思ったけど、なんか熟年夫婦みたいだよね」

よくわからないことを巧が言い始めた。

「熟年夫婦?なんか嬉しくないんだけど」

「いや、あうんの呼吸的な?あの時、侑里は付き合ってないって言ってたけど絶対違うと思ったもん」

どうだと言わんばかりのドヤ顔。

でも実際付き合ってなかったんだよな、と思いながら藤木さんに視線をやると、ちょっと考えるような仕草をしている。そして不意に、ニヤっとこっちを見て笑ったかと思うと

「いや、付き合ってなかったよ。だって、こいつその時他の男に夢中だったから」

とんでもないことを言い始めた。
< 94 / 399 >

この作品をシェア

pagetop