恋文参考書




そして、ふたりで肩を並べてレターセットを見た。

キャラクターものや不思議なデザインのものでひとしきりはしゃいで楽しんだら、真剣に選びはじめる。



その章の横顔は目を細めてしまうほど、消えてしまいそうなほど、綺麗だった。

とても眩しかった。



「……これにする」



章が選んだのは、クリーム地に柔らかい茶色のラインが斜めに入ったもの。

手触りはつるりとしていて、まるで折り紙のようなんだけど、そんな幼い印象を与えられることはない。

便箋は白地にグレーのドットが少しだけ散りばめられていて、とても素敵。



これが、章にとっての薫先輩。

可愛らしく、だけどシンプルで大人っぽい、人を選ばないデザイン。



「いいね」



ん、と頷く章の口元はほどけるように緩んでいて、満足げだ。

その表情を見られただけで、連れて来てよかったなぁと思う。



「日生は? なにか買うのか?」

「あたしはね、まぁちょっと……」



なにを見てもお気に入りになってしまう弊害は、そんなつもりなかったはずなのに思わず手に取ってしまうこと。

気づけば購入を決めたものが腕の中にふたつ。



レターセットと、ハートのフレークシール。

小瓶のようなデザインのパッケージのなかに真っ赤なハートがいくつも入っているところがなんとも可愛い。






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