恋文参考書




4月に新入生歓迎号、6月に1学期号、9月に文化祭号、11月に2学期号、そして2月に卒業生送別号を出している文芸部。

あたしたちが今回作ったのは、もちろん卒業生送別号。

3年生向けの内容が多く、現代ものを書く人は最高学年を主人公にしていたり、センチメンタルな雰囲気の作品が目を引く。



印刷ミスが出た時のための対策として余分に印刷していたけど、インクがすれて使いものにならなくなったり、斜めに印刷されてしまった紙をひとまとめにする。

これは美術部や書道部がざらしとして使ってくれることになっているんだ。



部室に保管用、配布時の試し読み用をそれぞれ1冊ずつ用意して、自分たちが持ち帰る分を引いた80冊を手分けしてケースに入れた。



「部誌は2年生で運ぶから、1年生はざらしを美術部さんたちに届けておいて」

「わかりました。行ってらっしゃいです」



にこにこと見送ってくれるふみとすでに運ぶ準備をしている一条を背に、みんなでケースを持つ。

運び先は、部誌の配布スペースを用意してもらっている図書室。



ここ最近よく行っていた別館とは違い、誰もが利用する本館の図書室は部室と同じく4階にある。

このケースを抱えて階段の上り下りは面倒だから、同じ階でよかった。



そうして図書室に着くと、そこにいた顧問の木下先生が顔を綻ばせた。

ご苦労さま、と労ってくれて、今日も木下先生は優しい。

製本作業明けの疲れた心に癒しオーラが染み渡ります。






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