好きになれとは言ってない
 



 焼きそばは結局、航が奢ってくれた。

「お前、三分の二しか食べてないし、俺が食えと言ったんだからいい」
と言って。

「すみません。
 予想外に食べちゃいましたよね」
と帰る道道言うと、航は、

「いや、美味いから食べさせてやりたかったんだ。
 食べてくれた方がいい」
と前を見たまま言ってくる。

 いやでも、課長が食べる分、減っちゃいましたよね、と思ったのだが、あんまり言っても無粋かな、と思って黙っていた。

 ……食べさせてやりたかったとか、なんかちょっと嬉しいし。

 と思ったのだが、そこで黙ったのは失敗だった。

 そのまま、話題が途切れてしまう。

 えーと。
 二人きりだし、なんだか気まずいんですけど、と思ったのだが、航はそこで気を使ってしゃべり出すような男ではない。

 沈黙したまま、二人で、あの不思議な感じのする狭い路地を通った。

 青白いくらい明るい月の光に照らされた航の背中を見ていると、がっしりとした肩がスーツの上からでもよくわかる。

 さっきの制服フェチの話を思い出しながら、いや、スーツも似合うけどなーと思っていた。

 なんとなく空を見上げる。
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