好きになれとは言ってない





 呑み会は、何故か優樹菜の希望で、寿司ダイニングになった。

 自分で作る手巻き寿司は、お洒落な感じのお膳で出てきた。

 黒い大きな器に、うちではこんなの巻かないぞ、というような具も出てきて、目にも鮮やかだ。

 これで、日本酒で一杯とか最高だ。

 いろいろと吐かされるのは嫌だけど。

 でも、そうだ。
 真尋さんの店の宣伝はしようかな、とかいろいろ考えていたのだが、すべて余計な心配だった。

 早々に出来上がった亜紀が、遥を吐かすと言ったはずなのに、自分で吐き始めたからだ。

「それでさー。
 入社してすぐ、小宮にキスされたんだけどー」

 ええーっとみんなが盛り上がる。

「あの男、単に暗がりで二人きりになると、反射的にしてしまう男だったのよ。
 そんなこと知らない純情な私は舞い上がっちゃってさー。

 莫迦みたいー。

 でも、次の日、他の子とチャラチャラしてる小宮を見て、一瞬にして目が覚めたわ。

 そんな一晩でフラれたこととか知られたくなくて、普通に、まあ、小宮さん、いいんじゃない? 的な態度とってたけど。

 実は、いつも、はらわた煮えくり返ってんのよーっ」
とカラになったガラスコップを握りつぶす勢いでつかむのを見て、ひい、と思う。
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