好きになれとは言ってない
「いえ、真尋さん、お薦めので」

 真尋さんとか呼んじゃっていいのかなと思ったが、向こうも遥ちゃんって呼んでるし、新海さんとは呼べないしな、とチラと航を見ると、航は、
「この店のお薦めはナポリタンだ」
と言ってくる。

「だから、珈琲専門店って言ってるだろ」

「珈琲を主に置いているナポリタンのうまい店だ。
 ナポリタン」

 はいはい、と真尋は紅茶を淹れながら、ナポリタンを作り始めた。

 それにしても、私は何故、此処に連れてこられたんでしょうね、と思いながら、遥はスツールに座っていた。

 店内はシックな色合いでまとめられていて落ち着いている。

 ようやくメニューを見つけ、眺めていると、小さなスキレットのようなものに入っているフレンチトーストが美味しそうだ。

 頼もうかな。

 でも、オーダーストップだったよね、と思ったとき、いい匂いがしてきた。

 ケチャップが焦げる匂いだ。

 思わず、真尋の手許を覗き込むと、真尋が少し笑った。

「はい、どうぞ」
と航の前にそれは置かれた。

 鉄板にのったナポリタンだ。

 大きなウインナーがど真ん中にのっている。
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