好きになれとは言ってない
 



 何故、倉庫、と思う航は、お昼前にお腹がなりそうになったとき、遥が隠れて倉庫でお菓子を食べているのを知らなかった。

 倉庫の片隅でケーキを食べてるのを見つかったら、さぞかし間抜けだろうな、と思う。

 まあ、こいつなら、キャラ的に許されるか、と思いながら、
「……そうか」
と言った。

 早く戻った方がいいのは確かだが。

 店の外はいい天気で街路樹も紅葉して綺麗だった。

 外で食べさせてやりたい気もするが、そろそろ此処、定期便が通るしな。
 見られるとまずいか。

 そんな呑気な社員こそクビにしろとか言われそうだからな、と思いながら、
「じゃあ、帰るか」
と言うと、

「はいっ」
と遥は小さなケーキの箱を手に、機嫌よく言う。

 帰りの車の中、大きな箱は後部座席に載せていたが、小さな遥の箱は彼女の膝にちょこんと載っていた。

 それを見ていたらしい遥に、
「そういえば、真尋さんのお店って、ケーキありましたっけ?」
とふいに問われ、つい、

「さあ。
 知らないが」
と言ってしまう。

 ないわけがない。
 女の客がほとんどなのだから、あの店は。
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