好きになれとは言ってない
 



 ああ、仕事中にケーキ屋さんで甘い匂いを嗅げるなんて、幸せすぎる。

 店内で遥が一人、喜びに浸っていると、
「ひとつ買っていいぞ」
と航が言ってくる。

 お言葉に甘えて、ひとつ選んでしまったが、それは領収に入れてなかったので、恐らく、自腹で買ってくれたのだろう。

「すみません。
 ありがとうございます」
と言うと、

「こっそり食べろよ」
と言ってくる。

 おつりをくれながら、店員さんが、
「此処で食べていかれてもいいですよ」
と言ってくれた。

 なるほど。
 食べていく人も居るみたいで、隅には小さなテーブルと椅子があった。

 水も置いてある。

「あ、いえ。
 いいです。

 ありがとうございます」

 仕事を抜けてきているので、早く会社に戻った方がいいだろうと思い、断った。

「見つからないように持って入れよ」

「すぐに隠れて食べます。
 倉庫とかで」






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