好きになれとは言ってない
 



 会社の地下駐車場に車は着いた。

 航に続いて、遥が車を降りると、
「ご苦労だったな、古賀遥」
と航に言われた。

 ……はっ、ありがたき幸せ、と言いたくなる理由がわかりましたよ。

 身体が大きいだけじゃなくて、貴方の話し方とか態度が尊大だからですよ、と思ったのだが、ぐっと堪えてみた。

 それにしても、二人なのに、フルネームか、と思ったが、それも言わずに堪えた。

「それ、早く食べろよ」
とケーキの箱を見て、航が言ってくる。

「なんだったら、お前のとこの部長に言っといてやるぞ」

「ケーキ食べる時間を与えてやれってですか?」
と遥は笑う。

「大丈夫ですよ。
 私、こそっと食べるの得意なんで」

「……いつもやってるのか?」

 はい、と笑顔で言ったあとで、航の腕をつかむ。

「たっ、たまにですっ。
 クビにしないでください~っ」
と訴えると、

「それくらいでクビにするかっ。
 離せっ」
と強引に振りほどかれる。
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