好きになれとは言ってない
 そんなに派手に振りほどかなくても……。

 いいじゃないですか。
 腕をつかむくらい、といじけながらも、顔には出さず、

「はーい。
 じゃあ、失礼しまーす」
と別れようとしたのだが、よく考えたら、隣りの部署だった。

 結局、一緒にエレベーターに乗ってしまう。

 誰も乗っては来なかったので、ケーキの箱を見ながら笑っていると、
「そんなに嬉しいか……?」
と航に言われた。

「いやー、会社で仕事中に買ってもらったっていうのが、またいいんですよ。
 なんかこう、特別感があるじゃないですか。

 例えて言うなら、学生時代、日当りのいい保健室で寝てたときみたいな……」

 そこで、はっとして、航の腕をつかむ。

「たまにですよっ、たまにっ。
 仮病じゃないんですよ。

 せ……っ」

 で、言葉を止めた。

 危ない、危ない。

 あやうく、生理痛だったんです、と大魔王様に向かって言うところだった、と思いながら、

「ク、クビにしないでくださいっ」
とつい、訴えてしまう。
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