泥棒じゃありません!
「それなら別に、小さめの四角でも丸でもいいよね?」
スティック型に決まった理由なら、他にもちゃんと明確なものがある。
「四角形はひと口齧ろうとした時、紙を全部剥いてしまうと手に融けてしまいますし、中途半端に剥けば食べる時に邪魔になります。球体でもいいのですが、それでは高級感が損なわれます」
「なるほど」
これで納得してもらえただろうか。私は資料から視線を上げ、蓮見マネージャーを見た。彼はなぜか、にやりと笑みを浮かべている。
「で、そもそもこれが高級である必要性はあるの? これの主なターゲット層は主婦だよね。主婦ってお菓子にそんなにお金かけられる?」
さすが、痛いところを突いてくる。確かにそこはこれまでもチームで何度か検討してきたところだ。
私は一度、小さく息を吐き出してから答える。
「……主婦だからこそ、なおさら特別感が必要なのではないでしょうか。それなりのものを適当に食べるより、高級感があってひとつでじゅうぶん満足のいくものを食べたほうが癒し効果も期待できます。少し高くても、満足できる味というのが肝心じゃないかと思います」
このチョコの味には自信がある。これまで何度も何度も試作して試食して、いいものを作り上げてきた。
味の部分だけは、蓮見マネージャーにもすんなり理解してもらえるのではないだろうか。