泥棒じゃありません!



あまりにも“白紙”のショックが大きすぎて、それからなにを聞かれてもどこか上の空で答えている自分がいた。仕事中にこれじゃいけないとわかっているのに、なかなか気持ちを切り替えることができない。

そんな私の様子を見かねてか、悠さんはお昼休みに入ってすぐ私の腕を引っ張り、会社近くのイタリアンのお店に連れてきてくれた。オガちゃんも一緒だ。

ここは前々から悠さんと「いつか行きたいね」と話していたお店。
正直に言ってしまえば、本当はこういう気分の時に来たくはなかった。でも悠さんはこういう時だからこそここだ、と考えてくれたのだろう。気遣いが身に沁みる。

引っ越し後で懐が寂しい状況にもかかわらず、やけ食いでもしなければ気持ちがおさまらないとばかりに、私はランチの中で一番高い『シェフおすすめランチ』を頼んだ。
そして運ばれてきた料理を見て初めて、食欲がないことに気づいた。

私は本当に、救いのないバカなんじゃないだろうか。


「会議でなんかあったの?」

付け合わせのサラダを無理やり口に入れていると、悠さんは回り道することなくストレートに訊いてきた。でも私には、変に気遣われて黙っていられるより、そのほうがありがたい。

「……悠さんのほうの会議は、どうだったんですか?」

とはいえ、なんとなく切り出しづらかった私は、先に悠さんに話を振った。

「うち? そりゃもうスッキリよ! 蓮見マネージャーが、三橋菜月と彼女に甘々な課長をバッサリ切り捨ててくれたからね」

「切り捨てたって……まさか、チームから外したんですか?」

オガちゃんが驚いてそう尋ねると、悠さんは首を横に振る。

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