泥棒じゃありません!
「違う違う、仕事になっていなかった部分を立て直してくれたの。彼女は会議が終わってから蓮見マネージャーを追いかけていったけど、まったく相手にされてなくてなおさら気分が良かったわ。もう『救いの神、降臨』って感じね」
すがすがしい顔でパスタを頬張る悠さんを見たら、ますます切り出せなくなってしまう。私は「そうなんですか」とだけ言ってじゃがいものポタージュを啜った。
「で、そっちはどうだったのよ。またやりこめられた、って顔してるけど」
「ああ……まあ」
悠さんの問いかけに、曖昧に頷いてみせる。
「無理難題押しつけられたとか?」
「それだったらまだ、よかったんですけどね……」
会議のことを思い出すたびに悔しさがこみ上げてくる。それと同時に、何年経ってもさして成長していなかった自分が情けなくなった。
「私には、蓮見マネージャーは破壊の神だったみたいです……」
そう言ったら一気に視界が滲んだ。向かいに座っていた悠さんが私を見て驚いている。
「……白紙に戻すって、言われちゃいました」
普通のトーンで話したら余計に泣いてしまいそうで、そんな気分じゃないのに少し笑いながら言ってしまった。
驚きの声を上げたのは隣に座っていたオガちゃんだ。
「白紙って……もうこの発売間近という状況で、ですか?」
それが蓮見裕貴という人なんだよ、とオガちゃんに言いかけて、やめた。
「それ……ほんと?」
「こんな状況で嘘なんか言いませんよ……」
蓮見裕貴という人物をよく知っている悠さんですら、言葉を失っている。
蓮見さんが統括マネージャーだと聞いた瞬間から、ある程度覚悟はしていた。でも、現実は予想のはるか上をいっていた。
私は勿体ないと思いつつも食べることができず、結局、ランチを半分以上残してしまった。