泥棒じゃありません!


自分の口から落胆の声が漏れ出た。てっきり、メグがとんでもなく素晴らしい妙案を思いついてくれたと思ったのに。

今の住人が良い人なら、事情を話せばもしかしたら家の中に入れてもらえるかもしれない。でも私が逆の立場ならどういう事情であれ、得体のしれない人間を気安く入れたりはしないだろう。

やっぱりどうやっても、あの写真は誰かに見られてしまうのか。

「その時は私もついていってあげるからさ」

メグは運ばれてきたはちみつレモンサワーを一口飲んでにこりと笑う。

「……うん、ありがと」

私は飲みかけだったモスコミュールを手に取り、メグと乾杯した。


* * *


月曜の社内はいつもどこかバタバタと落ち着かない雰囲気を醸し出している。それは雰囲気だけでなく実際に仕事が立て込んでいることも多く、特に年度末の最終週である今週はみんなが慌ただしく動いていた。

かくいう私も今日は午前のうちにふたつ、会議が入っている。私は会議資料とタブレットPCを手にして、席を立った。


私の働くここ『アミロ株式会社』はお菓子を中心とした日本の大手総合食品メーカーだ。日本人の誰もが一度はうちの商品を手にしたことがあると言っても、おそらく過言ではないと思う。海外にもいくつもグループ会社があり、今ではアミロのお菓子は日本人のみならず、ありがたいことに世界中の人たちにも広く親しまれている。

『アミロ』という社名の由来はふたつある。ひとつは人間の体に必要なアミノ酸とプロテイン(タンパク質)を合わせた造語、もうひとつは『安心』で『魅力的』で『老若男女』に愛されるお菓子を、の頭文字を取ったもの。


< 8 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop