泥棒じゃありません!
私はアミロのマーケティング部・チョコレート企画グループ所属。仕事内容は平たく言えば、アミロのチョコレート菓子の総合プロデューサーといったところだ。研究所や営業、広報などと連携してひとつの商品を一から作り上げていく。
自分の考えたものが形になるという喜びややりがいはすごくある。でもそれゆえに責任は重い。今は一年かけて詰めてきたスティック型のチョコレート菓子が最終段階に入っている。スーパーやコンビニの棚に並ぶまで、あともう少しだ。
元カレの秀樹は営業部で、以前に比べれば社内で会う機会は減ったけれど、商品によっては今でも大きくかかわりがあるから嫌になる。
会議を終えて席に戻ると、机の上にクリアファイルに入った書類が置かれていた。
「なんだろう、これ……」
手にしてみると、なんとなく書類だけとは思えない重さを感じる。
「ああ、それ営業部の下山さんがさっき置いていきましたよ」
向かいの席の後輩、小川千尋――オガちゃんが、私の様子を見てそう言った。
「下山さんが……?」
今、特に秀樹から渡されそうな書類はないはずだ。
クリアファイルから書類を取り出すと、クリップで閉じられていた部分が向こう側に大きく下がった。裏を返してみれば、そこにはなにも書かれていない真っ白な封筒が挟んであった。
席に座り、こっそり封筒を開けてみる。すると、中から見覚えのある鍵がひとつ出てきた。